まさおまっさお

思ったことを書き残す所だよ

     

300万円を返済している私から見た、奨学金の話。

f:id:MasaoBlue:20160327042601j:plain

 

 

お金を借りるには『覚悟』が必要だ。

 

 

何かと話題に上がる奨学金

 

お金がない人達にお金を貸してあげているにもかかわらず、「学生に借金をさせんな!」とか「こんな額返せない・・・」とか、文句ばかり言われる不憫なヤツ。

 

そんな奨学金を借りる学生は、一体何を持ってなきゃいけないだろうか?

 

 

はじめに

それは、『絶対に返済する覚悟』だ。

 

「そんなの当たり前じゃん」と思うかもしれない。

 

でもこれは奨学金に限った話ではなくて、金融機関からでも、友達や親からでも、お金を借りる時には必ず持っていなければならない。

 

返す覚悟が無いのなら、それは借りたのではなく奪ったのと同じだ。

 

今回はこの当たり前の覚悟について考えていく。

 

 

 

1. 私と奨学金

始めるにあたって、まずは私自身のことを紹介する。


私は奨学金を借りて3年制の専門学校に通い、それなりの会社に、幸いにも正社員として就職することができた。そして現在は毎月の返済を進めている。

 

そんな私の奨学金は、以下のとおりだ。

 

f:id:MasaoBlue:20160326232713j:plain

 

  • 借りた金額
    月10万円 = 年間120万円 を2年間。
    計240万円

  • 返済額
    毎月16769円 × 180ヶ月(15年)
    計約300万円

  • 【参考】
    専門学校の授業料: 年間約100万円
    ※1年目は親に負担して貰い、2、3年目に奨学金を借りた。
    ※実家住まいで、アルバイトで月5~10万程度稼いでいた。

 

これをどう見るか

これを見て、皆さんは何を感じただろうか。やっぱり「社会に出る前の学生が、こんなに借金を負うのはおかしい」と思うのだろうか?


当事者である私は、この金額を見て、おかしいと思ったことは一度もない。そんな額面の話よりも『お金を貸して貰えた』という事実の方が何百倍も重要だ。

 

私はこのお金があったから専門学校に通うことができたし、IT業界に就職できるだけの資格や知識を身に付けて、趣味や交際費まで充実した生活を送りつつ、地方から出てきて就職活動を行うまで、お金に困ることはなかった。

 

これらは間違いなく、奨学金のおかげだ。

 

もし普通の金融機関からお金を借りていたら、年利は3%どころでは済まず、今頃もっと苦しい思いをしていた。

それが分かっているので、私は奨学金にとても感謝している。

 

 

ここからはこの事実を踏まえ

  • 運営機構(機構)
  • 学生
  • 社会環境

という3つの視点で話をする。

 

2. 運営側としての一番の問題

はじめに、奨学金を運営する上での一番の問題は何か考える。

 

私が思うに、運営側にとっての大きな問題は以下の2パターンしかない。

  • 必要な人に必要な金額を貸し出せないこと
  • 貸したお金が返ってこないこと

 

これは、どちらが大きい問題だろうか?

 

貸し出せない問題

学生がお金を必要としている時に「貸し出すお金が足りない」というのは、運営側としてあってはならない状況だ。これは借りたい学生が予想より多すぎた場合に発生する、いわば運用に失敗した状態を指す。

 

ただこの場合、「優先度の低い学生(有望でない人や、お金に余裕がある人)には貸さない」という対策を取ることができ、「優先度の高い学生(将来有望で、お金が無い人)に貸し出せない」という一番まずい事態は避けられる。

 

このように『貸し出せない問題』は機構側で対応可能な問題である。

 

返ってこない問題

一方の「返ってこない」ケースはどうだろうか。

 

奨学金を借りる前にはある程度の審査が行われるが、貸し出す時点で、その学生の返済能力を判断するのは非常に難しい。にもかかわらず、これを見誤るとお金が返ってこなくなり、常態化すると資金運用の根本が崩れてしまう。

 

この『返ってこない問題』は機構側での対策が難しい上、奨学金の運営を左右する最も大きな問題である。

 

上記以外の問題について

この2つ以外の問題は、機構側としてはあまり重要ではない。

 

「ちゃんと貸せてちゃんと返ってくる」なら、そのお金を全額娯楽に使われようが、株や投資でスって無くそうが、それ自体は運用には何の関係もない。

 

学生に適度な娯楽は必要だし、勉学だけに没頭した人間が社会で活躍できる訳でもない。そもそも「奨学金」という使途を強制しない形でお金を渡している以上、使い方には自由さがあって当然である。

 

 

つまり、奨学金の運営側として重要なのは、卒業した後の学生が『返済してくれるかどうか』だけなのだ。

 

3. 学生がお金を返せない3大原因

ではこの「返済」について、学生が『奨学金を返せなくなる原因』を考える。

個々の理由は様々でも、大きく分けると以下の3つのいずれかだ。 

  1. 事故や病気で体が悪くなって、働けなくなった
  2. 稼いではいるが、返す気が無い
  3. 自分、および業界の稼ぐ力を見誤った

 

1.働けなくなった

いわゆる「どうしようもない状態」であり、お金を貸し出す時点での予測もできない。このケースは少なく、対処のしようもないため議論は不要とする。

 

2.返す気が無い

これは(もし存在するなら)最悪のケースだが、取り立て等の強制手段が使えるため、結果として返済させることが可能である。

 

3.稼ぐ力を見誤った

これが最も難しい問題であり、恐らく最も多いケースだ。

 

現代において、「学校で学べること」と「社会で必要な力」は別物であり、学生時代の成績が良くても社会で活躍できるとは限らない。だから、実際に働いてみて初めて『思ったより稼げなかった』という絶望が襲ってくる。

 

対策としては実際に測るしかないが、どんな手段を使っても、奨学金を借りる時点で『自分がどれだけ稼げるか』を判断するのは難しい。

 

とはいえ、未来が不明確なのは当然のことだ。だからこそ、奨学金を借りた学生には「今の仕事で稼げないから返済を諦める」のではなく、「自分で稼ぐ道を見つける」という気概を持ってもらう必要がある。

 

それはお金を借りた人間に必要な『絶対に返済する覚悟』であり、この覚悟が無いなら奨学金なんて借りてはいけない。

 

 

4. それでも『借りなきゃいけない』社会

お金を借りるには覚悟が必要だと分かったが、社会に出た後で完済までその覚悟を継続するのは、なかなか難しいことでもある。

 

ではなぜ、返せるかわからない大金を、学生が借りる必要があるのだろうか?

 

そこには今の社会における様々な要因が絡んでくる。

今回挙げるのは以下の3つだ。

  • 企業による学歴優遇
  • 大学は『高校を卒業してすぐに行く所』と認識されている
  • 大学が学生を退学させない

 

学歴優遇社会

今の就職活動において、企業による『学歴優遇』は根強く、中卒・高卒というのは原因が何であれ大きなマイナス要素に見られてしまう。

 

「勉強する気はないけど大学に行く」というのは時間もお金も無駄にしかならないのだが、『大学卒業』というブランドが付くだけで就職に有利に働いてしまう。

 

だから、奨学金に頼ってでも進学しなきゃいけないと考える学生が多いのだ。

 

大学は『高校を卒業してすぐに行く所』

「お金が無いけど大学で研究がしたい」と思った時、一旦高卒で就職し『会社で働いて学費を稼ぎ、そのお金で大学に通う』という選択肢もあって良いはずだ。

でも現在の社会では、それはあまり一般的ではない。

 

そしてこれにより高校を卒業したらすぐに大学に入らなくてはならないため、やはり奨学金を借りる学生が増えてしまう。

 

退学させない大学

本来、大学には適度な厳しさがあり、やる気の無い学生は退学させるべきだ。

 

しかし今の大学はそうではない。

特に経営が厳しい所では、「どんな学生でもいいから長く居て欲しい」と考えるため、成績が悪くても卒業まで在籍できてしまう。これでは返せない借金をする学生が増えるのは当たり前である。

 

よく考えると「学生に借金をさせて大学がそのお金を巻き上げ、その学生はまともに就職できずに卒業した」なんて、最高に笑えない話である。

  

5. 本当はどうあるべきか

ここまで上げてきた問題に対して、あるべき姿を考えてみる。

  

奨学金の審査はもっと厳しい方が良い

私は学生の時、明らかに不真面目な生徒が奨学金を借りる姿を見てきたが、勉学に励んでいない人間に対してはお金を貸し出さない方が良いと考えている。

 

これは単に貸し出す側のリスクを減らすだけでなく、『お金を借りて進学したものの、何も身につかず、借金だけが増えた状態で卒業する』という、学生側にとっても最悪の自体を防げるからである。

 

貸したお金のせいで人生をダメにする可能性もあるのだから、貸与する側としても慎重に判断しなきゃいけない。

 

社会の流れを変える

社会については様々な要素があり、何か一つを変えれば良い、というものではない。

 

その中で言えるのは、就職において学歴優遇はやめて個人を正当に評価した方が良いこと。そして大学側では、学費が無駄になる学生はきちんと退学させ、お金を巻き上げるのをやめるべきである。

 

これができれば、無駄な借金を背負う学生を少しは減らせる。

 

借りる本人やその親は、自分の選択に責任を持つ

そもそも、奨学金というのは『親が貯金できていない金額を、子供が借りる』ことなのだから、それがどれだけ難しいかは考えるまでもない。

 

その上で、今回話をした『絶対に返済する覚悟』というのは、単に「頑張って返済しろ!」という意味ではなく、

  1. 奨学金についてしっかり理解し
  2. 制度に納得した上で借りて
  3. 返せる道に進みましょう

ということである。

 

私が奨学金を借りる時には事前の説明会があったし、それを真面目に受けていれば『自分がどれだけ借りていくら返さなきゃいけないのか』は大体把握できた。

  

「お金を借りて進学する」か、「借りずに社会に出て働く」か。

 

それは借りる前に選べるのだから、私たちは自分の選択に責任を持つ必要がある。

 

 

6. さいごに

奨学金が問題になる時、その原因は一つの場所にあるものではない。

でも、どんな状況であれ、借りたお金を返さなくて良い理由はどこにもない。

 

それは明確なのだから、お金を借りる時には必ず『絶対に返済する覚悟』を持とう。

 

私の奨学金もあと9年分残っているが、絶対に返済する。

 

これを続ければ、こんなに素晴らしい制度が問題視されることも無くなるはずだ。